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「瀬里くん、こっちこっち」
翌日、市役所で市長さんら関係者に挨拶をしてから、目の前にある開成山公園に歩いて移動した。
「そんなに面白くないなら付いて来なければ良かったでしょう」
「五月蠅いな」
恥かしそうに頬を染めると、ぷいっと顔を逸らされてしまった。
大智さんは僕たちの半歩後ろを歩いている。
「ここが開拓者の群像の塔だよ」
公園の中ほどに見上げるほどに高い塔が建っていた。
「安積開拓は郡山市の発展の礎となった。お婆ちゃんはここを散歩するのが好きで、よく連れて来てもらったんだよ」
亀が甲羅干ししているのどかな五十鈴湖の周りをゆっくりと歩いた。
「どうしたの?」
「送っていただいた桜の写真、撮影したのはどこかなって思って」
「グランドの向こう側に安積疎水土地改良区があるんだけど、そこから見る満開の桜がお婆ちゃん好きだったんだよ」
グランドの脇を横切り、2月に起きた地震の揺れで地下一階にあるろ過機械室の配管が外れ、プールから地下に大量の水が流れ込み機械が故障し、ようやく先月に再開館になった郡山しんきん開成山プールの前を通り、安積疎水土地改良区の前までゆっくり歩いた。
「あのさー、なんでわざわざ炎天下のなか、歩かなきゃならねぇの?」
不満ばかり口にする大智さんに、
「なら最初から付いてこなきゃ良かったでしょう」
あかりさんもやれやれとため息をついていた。
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