手を伸ばせば遥かな恋

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瀟洒な洋風の建物を門の外から眺めながら振り返ると、 「あ、ここ!」 桜は咲いてないけど、写真の景色と見事に重なった。 無我夢中になりスマホで何枚か写真を撮っていたら、冷たいものが頬に触れた。 「熱中症予防。飲め」 ぶっきらぼうに言うと、ぽんと手渡された。 「ちょっと大智!少しは優しく出来ないの?」 「五月蝿いな」 ぷいっとそっぽを向くと、 「帰るぞ」 すたすたと先に歩きだした。 道路を横切ろうとしたら、軽くクラクションを鳴らされた。 「あかり、もしかしてその子が留学生の子?」 助手席側のドアが開いて若い女性が顔を覗かせた。 「そうよ、この子が古賀瀬里くん。写真よりもめっちゃ可愛いでしょう」 「うん。だから大智がさっきから不機嫌なんだね」 女性がクスクスと笑うと、大智くんは顔をますます真っ赤にしプイッとそっぽを向いてしまった。 「瀬里くんはじめまして。あかりと大智の姉のこなつです。彼が主人の」 「井上です。瀬里くん宜しくね」 運転手席に座ってハンドルを握っていた男性に笑顔で会釈され、 「古賀瀬里です。宜しくお願いします。お世話になります」 ガチガチに緊張しながら慌てて頭を下げた。 「もう、やだ。そんなに緊張しないでよ」 「そんなこといったってはじめて会うんだもの。緊張するでしょう」 「あかり、車は?」 「市役所の駐車場よ」 「暑い中よくここまで歩いてきたね。私たちこれから開成山大神宮に行くんだけど、ふたり乗せていこうか?」 「お願いしてもいい?」 「もちろん。じゃあ、そこで待ち合わせね」 あかりさんが後部座席のドアを開けてくれた。宜しくお願いします。一声掛けてから車に乗り込んだ。 「えぇ~~なんで俺も行かないといけないんだよ」 「文句言わないでさっさと乗りなさい」 あかりさんは大智くんの腕を掴むと、強引に車の中に押し込んだ。 あかりさんを見てると僕の姉しゃんみたいだ。
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