手を伸ばせば遥かな恋

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「瀬里くんいらっしゃい」 あかりさんと大智くんのご家族と近所に住む親戚の方が総出で出迎えてくれた。 「あ、あの……」 すっかりあがってしまい挨拶しなきゃいけないのに言葉が出なくて。焦れば焦るほどますます緊張し頭の中が真っ白になってしまった。 その直後、フワッと温かな何かが手に触れた。 それが大智くんの手だと気付くまでしばらく時間がかかった。 「父さん、母さん、おじさんたち、おばさんたちまずは落ち着こう。瀬里が驚いている」 大智くんがお父さんとお母さんたち順番に一人ずつ紹介してくれた。 「古賀瀬里です。今日から2週間お世話になります」 「宜しくね瀬里くん」 「大智、いつまで手を握ってるの」 ニヤニヤとあかりさんとお母さんたちに笑われ、 「うるさいな」 大智くんがムスッとしながらも手をすっと離してくれた。 「ありがとう」 「だからいちいち礼はいらない。部屋を案内する。付いてこい」 大智くんがリュックサックを肩に掛け、宅配便で届いたキャリーバックを持ち上げると、すたすたと階段を上りはじめた。 「自分の荷物くらい自分で持つから」 「階段を踏み外して怪我をしたらもともこうもない。狭いから足元気を付けろ」 ぶっきらぼうだけど、ツンツンしているけど、大智くんって意外と優しいひとなのかも知れない。
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