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陸と璃子
「そういえば、そろそろ誕生日だったか。プレゼントねぇ…」
四葉は考え込んでいる様だ。
璃子の誕生日が近いので、プレゼントでもあげたらどうかとSNSで私から連絡したのだ。陸と璃子とは幼い頃何度か遊んだ事があるし、璃子とは最近もたまに連絡を取り合っている。私から話題に出ても違和感はないだろう。
先日、四葉の家へナヒトを忍び込ませた時にナヒトから説明された作戦をこの日実行に移したのである。
「前回…槇原陸の妹である、璃子へ渡すプレゼントを四葉と陸は2人で考えていた。」
ナヒトは遠い昔の事を話すかの様に続けた。
「そして、ぬいぐるみを渡す事になった。黒い毛玉に脚が生えている様な悪趣味なぬいぐるみだったな。」
「黒い毛玉…あ、もしかして」
SNS上で最近話題になっているぬいぐるみの事だった。悪趣味って…可愛いと思うけど。
「それを買いに行く途中で陸は…死んだ。事故だったんだ。だが、それを自分のせいだと思い込んだ四葉は、この出来事を悪い"夢"だと認識しようとした。その結果、四葉の"認識"は分岐してしまった。」
「そうなんだ…それで、私はどうしたらいいの?」
「四葉に別のものを買わせる。そうすれば陸は死なずに、分岐も起こらないかもしれない。」
なるほど、陸さえ死ななければナヒトの言う"分岐"は起こらないと言う事らしい。いまいち現実味に欠ける話だが、よく考えれば猫と普通に話してしまっている時点で現実味などないのだった。
今となってはこの選択が間違いであったと、確信を持って言える。私達は、行動させるべき人間を"間違えた"のだ。
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