番外編③

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「はい、ここにお粥置いておくけど、今食べる?あ、食べないとダメだからね!具合悪くても一口は食べてね!」 「わかってるって。食べるよ」 そう言って重たそうな体を起こして額に手を当てる。 「今食べるの?」 「そりゃ、作ってもらったから」 そういう夏希君に私はローテーブルを近づけて彼が食べやすいように移動する。 「お風呂は入らない方がいいんだよね。熱があるときは」 「…そうだろうな」 「パジャマの替えあるから言ってね。千秋さんのだけど」 「ありがとう」 呼吸するのもつらそうに見えて、一口でも食べてくれるといいなと思いながらじっと彼を見ていると彼が「ちょっと、」と言って手招きする。 どうしたの?と言いながら彼の布団に近づいた瞬間、急にぐっと手首を掴まれて前のめりになって倒れそうになる。 「あ…―」 掴まれた手首から伝わる熱は一瞬で体温の高さを伝えてくる。 至近距離で見つめ合い、何が起こっているのか理解できないまま夏希君の唇が動く。 「そういうところだよ。無防備すぎる」 「…え」 「熱あっても桜子に今キスすることもできる」 「…夏希君は、しないよ」 具合が悪そうに顔を顰めながらも彼の瞳はちゃんと私を映していた。 まだ離してくれない手首のせいで彼とは距離が近いままだけど、無防備だったわけじゃない。 夏希君はキスとかそういうことはもうしないと確信している。
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