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「どうしたんですか、あんなところに」
「やけに遅いなってちょっと気になって」
「あー、盗み聞きしたんでしょ?」
「ふふ、まぁそうなるかも」
リビングでは二人分の夕食がすでに用意されていて、(今日はほぼ千秋さんが作ってくれた)
千秋さんの正面に座って食べ始める。
「夏希は本当に桜子のことが好きだったんだよ」
「…そう、ですね。でも、それ以上に千秋さんのことが好きなんですよ」
え?と声を漏らす千秋さんに私は箸を持ちながら笑みを向ける。
デートの時だって、結局彼は自分から身を引いた。
それは千秋さんのことが頭の隅にあったからではないか。千秋さんのことを尊敬している夏希君がそこまで振り切ることが出来なかったのは当然だと思った。
「でも嬉しかったよ。出会う順番が逆でも、俺のこと選んでくれてたんでしょ?」
「…そうですね。千秋さんと出会えて本当によかった。もちろん夏希君も大切な人です」
「そうだね。夏希は俺にとっても大切な弟だよ」
そう言った千秋さんの目はまるで保護者のような包み込むような、そんな目をしていた。
翌日、熱が下がった夏希君は千秋さんに送られて家に帰宅した。
千秋さんも夏希君も私にとってはかけがえのない大切な人だ。
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