不撓不屈

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「お母さんとは連絡は?」 「とってないし繋がらない…」 「でも…勝手になんて本当にひどいよね」 「どこまでもクソ野郎だよ、まじで」 去年家に急に押し寄せてきたと思ったら一時間くらい話して帰っていった時があった。多分あの時に勝手に私の印鑑を使ったようだ。 「この世の終わりか…」 「今仕事してないんでしょう?」 「そうなの…」 「自己破産とか…するしかないよね。払える額じゃないし」 「…うん」 もちろんそれも想定していたことだった。 ただ、今後の人生を考えるとそれは最終手段のような気がする。 「あのさ、こういうの勧めるのよくないって思うんだけど」 「なに?」 葉月は黒くて艶のあるセミロングの髪を自分の手で掬う。 さらさらと葉月の指から落ちるそれをじっと見た。 「…私の職場の上司が高級クラブのママと仲がいいの。それでね最近人が足りないんだって」 「…クラブ?高級?!」 「そう、でね…高級クラブだから面接しても落ちる可能性のほうが高いんだけど仕事見つかるまでとかよかったらどう?」 「やる!」 「え、即決だね」 「もちろんだよ!落ち込んでる暇なんかない!」 私は興奮してつい立ち上がっていた。 人の家だっていうのに、興奮気味に大きな声を出してしまう。 そうだ、私の座右の銘は不撓不屈! これを機に完全に親と縁を切って乗り越えてやる。 そのためなら何でもしようじゃないの。 鼻息を荒くしてガッツポーズをする私に葉月は笑った。 「昔から変わらないね」 「へ?そうかな」 「そうだよ。私がいじめられたって知ったら他のクラスだっていうのに乗り込んでぶん殴るんだもんびっくりしたよ」 「あーあれはやりすぎたよね。でも葉月のこといじめるなんて許せなくて」 「ふふ、破天荒っていうか…うーん、真っ直ぐっていうか」 「さすがに今はしないよ?そんなこと」 「やめてよ?警察沙汰にだけはならないでよね」 「わかってるわかってる」 葉月が懐かしそうに目を細めた。
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