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#2 ガラリアのサボテン
「純子、お帰り」
抑揚のない平坦な声で姉がいった。まるでロボットが喋っているようだ。
「お帰りはお姉ちゃんだよ。どうしたの?」
「どうしたって?」
「今日、帰ってくるとは思わなかったから」
「ダメ?」
「だめじゃないけど。これってサプライズ?」
「…………」
姉が黙って視線を窓辺に移す。そこには小さな、サボテンらしき球形の植物の鉢植えが飾られていた。
「このサボテン……」
わたしは窓辺に寄って、鉢植えを手にとろうと指を伸ばした。
「痛ッ!」
人差し指にトゲが刺さった。サボテンが飛ばしたのだ。
「気をつけて。まだ、あなたに気を許してないから」
「……お姉ちゃん」
そういえば姉はただソファに座っていただけで、テレビを見ていたわけでも雑誌を読んでいたわけでもなかった。
もしかしたら、このサボテンと会話していたのか?
「このサボテンはなに?」
わたしの問いに姉はこたえた。
「……お土産。ガラリアのサボテン」
つづく
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