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エピローグ
母と再会して一年が経ったその日は、母をドクターヘリで運んだ時と同じ青空が素敵な秋の日だった。
私は恋人だった健太と結婚式を迎えていた。新郎の宣誓が終わり、私の宣誓が続いている。
「新婦陽毬、あなたは健太を夫とし、病めるときも健やかなるときも、愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「それでは指輪の交換です」
牧師さんが二つの指輪を持って来てくれる。その指輪は母との再会でのキーアイテムとなった父と母の指輪を直したものだ。偶然、私達と両親のイニシャルが同じだったので、健太のアイデアで両親の指輪を譲り受ける事になった。
私と健太は向き合うと、健太が私の左手の薬指に指輪を嵌めてくれる。私はその指輪を母が二十五年間大事にして来た事を改めて思い出し、感動で涙が溢れて来る。最前列に座っている母を見ると、彼女も泣いている様だ。今度は私が父の指輪を健太に嵌めた。これは私がネックレスとしてずっと持っていたものだ。健太もそれを知っていて涙を浮かべてくれている。
誓いのキスを終え、私は健太と腕を組んで母の前に歩み寄った。母は瞳に大粒の涙を浮かべながら頷いている。そして嬉しそうに私達に声を掛けた。
「陽毬、そして健太君。おめでとう。私と圭司さんの分も幸せになってね」
FIN
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