トンネルから

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*  ──もう、死んでしまおうか。  ここから飛び込んだら、楽になるのだろうか。嫌なことも苦しいことも一瞬にして消し去ることができるのだろうか。  ぼんやりと線路を眺める。ホームを歩く靴の音が、トンネルの中でこだましていて、それが私に向けられているように感じた。  垣谷凛奈(かきやりんな)。  私の学校生活から彩りを奪いあっという間にモノクロの世界に放り込んだ人。  凛奈は高校に入学して最初にできた友達だった。最初のうちは毎日一緒に過ごしていたし、なけなしのお小遣いでスタバにも行った。休みの日は少し背伸びして化粧をしたりもして、少し疲れたけれどキラキラと輝いていた。  けれど、一気に暗闇へ落っこちた。  それは一学期の中間試験が終わり少し経った頃だ。  ようやく初めてのテストから解放されて、結果が帰ってきた帰り道だった。  いつも通り二人で並んで歩いていた。他愛のない話が途切れたのを狙ったかのように凛奈は口を開いた。 『そう言えばさぁ、紗奈、テストどうだったー?』 『うーん。微妙。凛奈の方が出来てるよ』 『まじ? うちもやばかった。ねね、総合点何点?』  この時、バカ正直に答えたのが災いした。 『三百五十(350)点弱』  厳密には三百四十七(347)だけど。テストは五百点満点だった。中学までは四百点は当たり前だった私にとって低い点数だ。高校はこんなに難しいのか、と唖然とした。  点数を答えた瞬間空気が急激に冷えていった。気温は低くないのに首まで鳥肌が立つ。 『は? 紗奈ってさ、うちの事舐めてるの?』  恐ろしいほど低く冷たい声でゾクっとした。  得体の知れない怖さが襲いかかり必死で声を絞り出した。 『え、なんで……? 別に舐めてなんか』 『ほんっと、前から思ってたんだけど、紗奈ってうちのこと見下してるでしょ』  凛奈は冷ややかにそう言うと走り去って行った。  そんなことない、と喉元まででかかった言葉は引っ込んでしまった。  翌朝、重い気持ちで登校すると居場所はなかった。  凛奈は元からクラスでも真ん中にいる人で、私と言うオモチャを手にした女王様になった。  凛奈様のご命令だから。大人しい子もそう言って薄ら笑いを浮かべながら私をいじめた。  親に相談するのは難しい。父は単身赴任でいないし、母も仕事で忙しい。  二人とも娘より仕事一筋なのだ。  そして、今日、決定的な一言が、胸の奥の柔らかいところをえぐった。 『お前なんてさぁ、生きる資格ないよ。誰も必要としてない』  凛奈に言われた言葉と、それに対して甲高い声で笑うクラスメイトの顔が離れない。  ジリジリと心を圧迫していく。  このまま飛び込んでしまおうか。 「電車が、参ります。黄色い線の内側にお入りください──」  ガタン、ガタン。  さぁ──
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