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あの日から、別の道を歩いた。晴れの日も、雨の日も。
あなたに、会えない道を歩く事は、とても切なかった。
(あ、手紙を書こう。)
私は、あなたに、手紙を書いた。好き。と言う言葉を、使わずに書いた。
それは、私にとって、初めての ゛愛する手紙”
だった。
でも、一度だけ、あの坂道で、あなたと、すれ違った事がある。
あの時、私は、父とばったり駅で出会って、家に帰るところだった。
あなたと、同じ大学の制服を着ている人が、沢山いた。皆、同じ人に見えた。
その人達と、すれ違った時、あなたの香りが漂った。 ボディコロンの香りではなく、あなた自身の爽やかな、香り。
【あの人だわ。】
私は、振り返りたくても、出来ない。
父と、一緒だったから。
そして、あの坂道ではなく、あなたとすれ違った時があった。
それは、駅前。丸ノ内線のM駅。
あなたと同じ制服を着た人が、五、六人いた。
その人達と、すれ違った時。あなたの香りがした。
私は、立ち止まって、恐る恐る振り返った。
あなたがいた。
あなたも、振り返り、私をじっと見つめていた。
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