入学

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母は、大満足だった。私は、ランドセルが、黒いのが嫌だった。 【 いい学校に、入ったんだから、我慢しなさい。】 父も母も、そう言った。 学校には、個性的な子ばかりだった。 そう、そう、入学祝いに、お婆様から、K書房出版の “ 少年少女世界文学全集 ” を、頂いたの。 凄いのよ。 小公子、小公女は、川端康成先生訳。 赤毛のアンは、曽野綾子先生訳。 家なき子は、福永武彦先生訳。 あしながおじさんは、詩人の、谷川俊太郎先生訳。 父は 【 こんなにいい、全集は、他にないな。】 と、驚いていた。 全集は、全部で、15冊で、大体、三話入っていた。 私は、聖書物語を、真っ先に読んだ。 学校は、プロテスタントの学校だった、という事も あったけれど。 学校に、同じ本を読んでいる、女の子がいた。 【 あれ? その本、私も、持っているの。】 私は、なかなか、クラスに、馴染めなかった。 初めて、話しかけた。 【 え? あなたも? 】 その子は、由紀ちゃん、と言って、大学まで一緒だった。 肌が、白くて、睫毛の長い、可愛い女の子。 私が、可愛い。 と、言うと 【 あなたこそ、可愛いわ。 どこから通っているの? 】 【 川崎から。】 【 私、横浜の鶴見よ。 私達、仲良くなれそうね。 】 と、私の手を掴んだ。
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