五つに割れた島

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 私の国の近くに、小さな島がありました。その島は、どこの国にも属していない、小さな島でした。私の国はその島を、自分の国の領土にしようとしていました。  私は軍でパイロットをしていました。国の軍人を何人か飛行機に乗せて、その島を上空から調査するのに同行したのです。  その島は、上空からみると、ほぼ五角形の形の島でした。  島の真ん中に、塔と思われる高い建物があり、その塔から道が五本伸びていました。道はそれぞれ五角形の角の部分に向かっていて、島を綺麗に五等分に分けていました。五つの道の間の土地は、綺麗な緑の木々に覆われていました。ところどころ、豆粒のような人の姿が見えました。   「見事に島が五つに割れているな」    飛行機に乗っていた軍の偉い人が言いました。その言葉を聞いたとき、私はなんだか嫌な予感がしたのです。 「あの、この島には、行かない方がいい気がします」 「なぜだ」 「なぜか、と言われますと、上手く言えません」 「ぐずぐずしてないで上陸しろ」  逆らえなかった私は、しぶしぶ飛行機を島に降ろしました。  だけど、私は着陸するときに、嫌な予感が勝って、飛行機を島の地面に着けることができなかったのです。 「仕方がないな、私だけ行く。はしごをおろせ」    飛行機から縄ばしごを降ろし、軍の上官が島の地に足をつけようとしました。そのとき、 「あっ!」  私はどうしてさっき、嫌な予感がしたのかわかりました。  さっき上官は、「この島は五つに割れている」と言いました。「五つに割れている」島、名付けるなら「五つ割りの島」です。そして、私は上官が上陸する直前、この島が「五つ割りの島」と書いて「いつわりの島」と読むことに気がついたのです。 「戻ってください、上官!」  そう叫んだときには、もう手遅れでした。  その島の木々は、すべて絵でした。立体に見えるけれど、すべて平面だったのです。  その島は、次元を偽る「いつわりの島」でした。  上官もその島に降りるやいなや、その絵の中に取り込まれて、平面になってしまいました。  私と、一緒に飛行機に乗っていた軍人は恐ろしくなり、すぐ引き換えして国に帰りました。  そして、「いつわりの島には絶対に近づくな」と国のみんなに言ってまわりました。  しかし、私が死んで、次の世代になると、私の言葉は「いつわりの島」から「五つ割りの島」になり、「近づくな」という言葉は消えてしまったのです。  そして、今日もまた、あの島に誰かが近づこうとしていました。  おわり
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