水族館のペテン師

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「僕はね、人を楽しませることが、僕の一番の喜びなんだ。今週末、デートに行きましょうよ。」 目の前の男はそう言った。 オレが質問したことに対する答えになってない。なんなんだコイツは。 「オレ、あなたの職業を聞きましたよね。 なんであんたとデートする事になるんですか。」 「君、顔良いしさ。じゃあ、これ、僕の電話番号だから。僕、こう見えても忙しんだよね。帰るから、新郎さんに言っといてよ。」 「ちょっ、おい。」 話しかけられた時、無視すりゃよかった...... 会社の取引先の相手の結婚式で、オレと同じ席に座っていたということは、さっきの男も仕事関係なのだろう。お互い楽じゃないな。 やめだ。あんなおかしなやつの事、気にしないようにしよう。デートなんか行かねーし。 それに、オレだって暇じゃない。 今週はちょっと遠出して、今話題の水族館に行くんだ。 水族館はオレの趣味だ。 イルカやセイウチのショーはもちろん、カワウソもペンギンやアザラシ。トドなんかはあの巨体、堪らん。イワシの大群。本当に人の首を一息に切ってしまいそうな太刀魚の輝き。エイの、カッコいいフォルムに似合わない可愛らしい顔。 語りだすと止まらない。 週末が待ち遠しい。
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