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出迎えてくれたのは、ここの水族館の看板娘。
セイウチのポテイトーを何倍にもした、巨大ポテイトーだ。
一眼レフのシャッターを切る。
趣味を満喫するために、この間、やっとの思いで購入したものだ。
今日の朝も、情報番組で紹介されていた。話題沸騰中だけあって、本当に人が多い。目が眩むが、海洋生物の前ではそんなもの関係ない。
「大人一人で。」
ついに来た。
館内に入ると、すぐに、ショーのステージがある。ショーは十分後らしい。
続々と人が集まってきている。オレもショーを見てから、館内を回ることにしよう。
お客さん参加型のショーで、大変盛り上がった。トドやカワウソ、アシカたちの芸。
そして、ポテイトーとのふれあい会。
次はイルカの......って
.........は?
なんでアイツが?
イルカたちを連れてきたのは、あの時の、あの男だった。
同時に、
キャーーーーーー!館長さーーーん!
女性たちの、黄色い歓声が響く。
館長さんと呼ばれた男は、笑顔で、片手を顔の前でひらひらとしてみせる。
やっぱりアイツだ。あのいけすかない仕草。
どうやら、一部の女性たちはイルカではなく、アイツのことを見にきているようだ。
オレは気づくと、完全に固まっていた。
絶対にバレたくない。
と思った瞬間、目が合った。
ああ、張り切って最前列をとったオレの馬鹿。
確実にこちらを見て、大きく手を振っている。
満面の笑顔付きだ。
故意を持ってかは分からないが、イルカに濡らされた。イルカに濡らされるのは正直嬉しいが、アイツが指示を出したに違いないと思うと、腹が立つ。
ショーの終わり、アイツはオレに口パクで伝えてきた。
「ちょっとまってて!」
このまま逃げるのもありだが、正直、バックヤードには興味がある。
濡れた服の文句も言わなければならない。
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