水族館のペテン師

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「......どうしてですか?」 僕は疑問が頭に浮かび、頭を巡った疑問は、そのまま口から、漏れ出していった。 「どうして、みんなに言わないんですか?」 公表しても良いはずだ。 大自然の映像を、そのまま水槽の中に閉じ込めている水族館。 話題性もあるし、客足も更に見込めるかもしれない。なのに、なんで? 「うーん。だってさ、楽しいし、わくわくするじゃないですか。そっちの方が。 君は、そうは思いませんか?」 片方の眉を上げて、緩やかな笑顔でこちらの意見を待っている。 確かにそうかもしれない。 大自然の映像ならば、テレビで見たことがある。 その時も、すごいと思った。 行ってみたいとも思った。 巨大な水槽になったら、もっと興奮するだろう。 けれど、それはここにはない。 この水族館はどうだ。 目の前には大きな水槽。 大自然を、そのまま閉じ込めたような。 そしてそれはここに、確かに存在している。 その方が、胸が高鳴る。
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