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クラブの前で2
「こんなとこ、ワンナイトラブ目当ての奴だらけだ」
再び、視線を戻すと俺は話を切り出した。
「……分かってます。もう、覚悟つかないから、それでもいいかなって……」
男は力なく笑う。
「でも……どうしたらいいか分かんなくて。その……されるのを怖がるから、彼氏にもフラれて」
コイツが受身の“ネコ”なのは大方の予想がついてたけど、“タチ”との本番が出来なくて……ヤケになってこんな所まで来たのか。
「ここは、ルールを分かって遊ぶ場所だ。無理に傷つくための場所じゃないんだよ。
遊び方を知らないアンタには向いてない」
「……僕、どうしたら好きな人とうまく付き合えますか?」
くりっとした大きな目で、男はこちらを見上げてくる。
知ったこっちゃねえよ、と思ったが、そもそも先に俺が余計なことを言ったからだ。
腕に付けているスマートウォッチの画面が光る、現在、深夜1時13分。
交代があるから、今日は2時には仕事が終わる。
知り合いのゲイバーに連れて行くのが正解なのか?
でも、この感じは、よく素性も知らない客に、お持ち帰りされるのがオチだろう。
アイツ、親友の匡のバーでも行くか……
「この辺で待ってろ。仕事が終わったら、話は聞いてやる。絶対に夜の公園とか行くなよ!ヤバイ奴いるかもしれないから」
「ありがとうございます、ちょっとコンビニで飲み物買ってきます。
あ、何が良いですか?」
「水をくれると助かる。あっついんだ」
「分かりました!すみません、僕の名前藤光 藍です。」
「藍、よろしく。鳴海だ」
ペットボトルの水を飲んでいると藍が物珍しそうな顔をして、少し離れた場所から、こちらを見ていた。
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