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「わかったよ……。――ところでこの剣、名前ってある?」
別に名前をつける義務はないのだが、アルディスでは一般的に、どんな武器にも名前が付く風習がある。作り手が名付けることもあれば、買い手が名付けることもある。
名前には大きな意味があり、たとえ物であっても、名付けることにより魂が宿るとされる。魂はエネルギーと同義で、それによってプラスアルファの力を発揮するといわれているのだ。
とにかく、使い手がしっくりくる名前をつけることが重要な要素なのだ。
レヴォルツは、師匠の愛用していた剣であり、そのときすでに名付けられていたから、そのまま引き継ぐかたちとなった。
今回の武器は――。
「あるよ。一応――」
ユキはいった。一応、という曖昧さに反して、その前の、あるよ、という言葉には強い意思が感じられた。
「魔剣『ガーディア』」
ガーディア――。
「バジルさんが付けたのか?」
ううん、と、ユキは首を振る。
「私の想いがこもってる。その名前でよければ、だけど……」
なら、ハンスに拒絶する理由はない。
「いい名前じゃないか? ――ガーディア。うん、しっくりくる。そう呼ばせてもらうよ」
魔剣ガーディア。
ハンスはそのガーディアを、黒い鞘の中へと納めた。そして腰のベルトに差した。この感覚も、レヴォルツと比べて違和感はない。
「似合ってるね」
ユキもどこか、嬉しそうな顔に思えた。最近のユキからは見違えるほどに、彼女の表情は輝いていた。
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