二章 決戦に臨む者たち

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「ただ、もっと視点を小さく絞って、部分的な出来事を見るとどうなるかな――というのがオレのいいたいことなんだよ。たとえば――」  ルカはおもむろに地面を指で差した。それはなんてことのない、薄い茶色をした大地にすぎない。 「今この足元に無数に並べられている砂粒の一つ一つがこの場所に敷き詰められていることさえ、『ノアの意志』によって決定されたことなのか――」 「それは……」  どうなのだろう?  その通りだ、といわれればそれで納得しそうだし、しかし、それは違うと否定されれば、それもそれで納得できるような気がする。  この世の物理的な現象には、ある程度の規則性が存在することは、すでにさまざまな研究によって証明されていることだ。  その規則性は法則ともいわれ、頭のいい学者たちはそれを公式のいう形にして表したりする。その公式を解くことで、物理現象の結果が理論的に導き出せるのだそうだ。  シャーロットあたりなら、そういう知識があるのかもしれない。  話を戻すと、その規則性――この世の法則というものを作ったのが『ノアの意志』だというのなら、この砂粒一つ一つの配置さえ、『ノアの意志』によって決定されていると捉えることもできる。  ただ、この問題は難しい――。  仮に、その法則が『ノアの意志』によって作られたとする。ならば、このノアという世界はそもそも、何によって作られたのか、という議論になってしまう。 『ノアの意志』という、物理的な実体のない概念が、世界を生み出したとでもいうのだろうか?  究極をいうなら、この世界ノアを作った別の神ですら、どこかに存在するのかもしれない。  そうなると、ノアですら本当は、その『名も知らぬ神の意志』の産物なのかもしれないのだ――。
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