二章 決戦に臨む者たち

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 うーん、わけがわからなくなる。 「どうだい? 考え出すと夜も眠れなくなりそうだろ?」  ハンスの心情を察するように、ルカは口を開いた。  どうやらしばらく、考え込んでしまっていたらしい。難しい顔でもしてしまっていただろうか。 「今晩はうなされるかもな」  ハンスはそう、冗談めかす。  ははは、とルカは愉快そうに笑った。  普段から非常に気のいいところのあるルカだが、今日は特別調子が良いようにも見える。  けれどまだ、ルカが目指している話題の着地点は見えてこない。 「それで? そこまで考えるなら、何かあるんだろ? その先に見えてるものというか、ルカなりに導き出したい結論が」  ニヤリとルカは笑う。自信に満ちた顔で。 「ハンスはなかなか面白いヤツだよな。本当に気が抜けないよ。オレなんかのことはお見通しみたいだ」 「いや、どっちがだよ。――俺はそんな大層な人間じゃない。思ったことをいってるだけだ」 「そうかい……」  まるでハンスの性質などには興味なしというように、ルカは端的に切り返した。  不意に沈黙が訪れる。ここからが本番だと思わせる空気が、周囲を包み込んでいく。 「――実は一つ、証明したいことがあってね」  ルカは呟く。  証明したいこと。それは『ノアの意志』の思想を否定してまで、導き出したい結論なのだろうか。 「こんな当たり障りのない、そう、それこそ、この足元の砂粒のような、平凡でちっぽけな存在であるオレにも、『ノアの意志』は律儀に適用されているのか、っていうささやかな疑問でね……」  不穏な雰囲気をまといながら、ルカは告げた。  砂粒はさすがにいいすぎにしても、いいたい内容は理解だいたいできる。この世界に無数の人間が暮らしているなら、自分という個人など、足元の砂粒のようなものなのだ。
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