二章 決戦に臨む者たち

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 この世界ノアの考えることを、ハンスは理解できるとは思っていない。  ただルカのいう、国を一つにまとめる目的とは、あくまでも人間という生物だけの生活を切り取り、人間目線からの目的を探すから理解できないのであって、もっと視野を広げて、全世界全生物に対するメリットを考えたとき、ノアはその結論に至ったのかもしれない。  どちらにせよ、わからないわけだが――。 「しかも戦争が起こるにはさ、きちんとそれなりの理由があるんだよな。それは外交だったり経済だったり資源だったり、古くは領土や身分を主張する独立戦争もあった。――まあ、最近のほとんどはオレたちにみたいな一般人にはなかなか納得しがたい国家的な理由ばかりなんだが、けどそれでも、そこには必ず、が確実に介入しているんだよな」  にわかに話題は複雑な方向へと進んでいく。 『ノアの意志』ではなく、人間側の理由の話に。 「――ま、それはいったん置いておこう。とにかく、戦争が起こるということは、そこに必ず国家どうしの思惑があるということを覚えておいてくれ。――ここから少し、オレの話をする」  ルカは続ける。自分が話に引き込まれていこうとしているのを、ハンスは感じていた。 「これもたとえばの話なんだけどな。――オレという一人の凡庸で矮小な人間が作ったがやがて大きくなって、世界に対して多大なる力を持つようになるとする……。すると、だ。そうなることも、『ノアの意志』によって決定づけられたものなのか、ということなんだよ」 「……ん? どういう……」  聞く限りでは、その通りだといえそうなのだが。『ノアの意志』の伝承を、素直に受け入れる限りは。
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