二章 決戦に臨む者たち

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 ハンスの怪訝な顔から納得できていないことを読み取ったのか、ルカはすぐに続けた。 「だって、よく考えてみてくれよ? ――オレだぜ? この、オレ。こんな、別に貴族の一人というわけでもない、世界的に認められた武術があるわけでもない、特殊な能力を持っているわけでもない。この世界から見れば取るに足らない矮小なオレという存在に、『ノアの意志』ははたして、世界を動かすような重大な役割を与えるのか、ということなんだ。この世界にはさ、人間はごまんといる。そのうちのたった一人であるオレなんてのは、いってみれば、この足元に散らばってる砂粒の一つのようなものでしかないんだよ」  自らを砂粒にたとえるのはやりすぎにしても、ルカのたとえ話は理解できた。  その砂粒の一つに『ノアの意志』による決定的未来を託すということは、まるでノアの気まぐれのようなものにすら思えてしまう。  あるいは、くじ引きのような運、偶然とでもいうべきか――。  少なくとも現時点で、『ノアの意志』がルカを選び出し、ルカの思い描く未来へと導いてくれる保証はどこにもないだろう。  だから、運なのだ。  無数の砂粒から、自分という一粒が偶然選ばれるような奇跡が起こらなければ、『ノアの意志』がルカにノアの未来を担わせるとは思えない。  それはとても、非現実的に思える。  いや、待て――。  そこでふと、ハンスの脳裏に、ある想像が浮かび上がってきた。常識的に考えると、荒唐無稽ともいえる、大胆不敵なおとぎ話が――。 「……ルカが自分の組織を持ちたい理由って、まさか、それなのか?」  ハンスはルカの目を見た。そこに質問の意図を図りかねる色はなかった。  自分自身がため、なのか?
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