12人が本棚に入れています
本棚に追加
しばしの沈黙――。
「オレはちょっと確かめてみたいのさ」
確認するかのように、ルカは言葉を紡ぐ。
「自分に与えられた運命ってヤツを――いや、違うな。――ノアがどうこうではなく、自分自身の意志ってヤツをな」
そういうルカの目は、どこか飄々として見えた。まるで言葉の壮大さと相反するかのように。いやあるいは、だからこそ、それは絶対的な自信の表れなのかもしれなかった。
ルカは何一つ気負うことなく、自らの野望が成就することを確信しているのだろうか。
自分が将来、組織を持ち、成功を納めるということを。そう取れるほどに、ルカの精神は充実しているように見える。
それは『ノアの意志』に選ばれること――つまり『ノアの意志』によって、将来の自分がノアにとって重要な役割を与えられることを確信している、といい換えることもできる。
「『ノアの意志』が未来のルカをどうするのか、ノアを相手取った壮大な賭けでもしようってことかよ……」
『ノアの意志』に選ばれるのか、選ばれないのか――。
その証明のためだけに、ルカは人生を賭けようとしているのだろうか。
ブレイバーという今の立場を捨ててまで。それは一般論的にいうなら、とてつもなく無謀な選択のように思える。
安全な街での暮らしを捨てて、あえて魔物が蠢く荒野でリスキーな生活することを選ぶようなものだ。
ただ、ルカは首を捻った。ハンスの言葉を受け入れられないというように。
「うーん、賭け……か。オレの中では、そのニュアンスとはちょっと違ってるかな？ オレのやろうとしてる行動はギャンブルなんかじゃなく、もっと確定的で絶対的なものなんだよ」
曖昧な表現だった。
最初のコメントを投稿しよう！