二章 決戦に臨む者たち

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 ルカはニヤリと笑みを作った。 「そう、そのとおりだ。話がわかるな、ハンス。――意志というのはさ、その個人によって決定づけられるものだ、と、オレは考えている。他の何者にもコントロールされることはない。たとえそれが、ノアであってもな」  まるでノアの支配に抗うような、強い口調だった。 「なるほどな。――ということは、ルカが今後始めることは、『ノアの意志』に導かれるものじゃなく、『ルカ自身の意志』ってことをいいたいわけだ。それこそ人間が――国家どうしが戦争を引き起こすのも同じことで、それは『ノアの意志』によるものではなく、あくまでも人間自身の意志によるものだと。だから、一見安定している世界にも戦争は起こる。それは『人間の意志』が引き起こしたことだからな」 「そういうことだ。だからこそ、オレみたいな凡人ですらも、オレ自身の行動しだいでは成功を納めることができるんだ。そう確信できるのさ。『ノアの意志』に選ばれなくとも、オレはオレ自身の意志で、未来を掴むことができるし、その権利を与えられている」  ルカは力強かった。まるで何者にも止められないほどのエネルギーを感じた。  これは勘違いや買いかぶりではないだろう。彼の内なる闘志が、抑えきれずに溢れ出しているのだ。  そんなルカにだからこそ、最後に一つだけ確認をしたかった。 「念のため訊いておくけど、それは自分を納得させるための暗示なんかじゃないんだろ? 強がりだとか、逃避だとか、暗示だとかじゃなくて、心の底から揺らぐことなく、そう信じているんだろ?」 「ははは、それは愚問だぜ、ハンス? 当たり前じゃないか。むしろそうじゃなけりゃ、夢なんて語るもんじゃないとオレは思うね。覚悟のないヤツほど早死にするって、相場は決まってるんだ。夢は語るもんじゃなく実現させるもの――語るだけで終わるのは臆病者か、語ることに酔ってるヤツがやることだぜ。――あんまりガッカリさせるようなことを聞くなよな」  最後は迫力のあるひと言だった。無論、ルカの信念を疑ったわけではない。
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