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「悪かったな。――いちおうの確認だけだよ」
まさかルカという男の中に、ここまでの哲学が存在するとは思ってもいなかった。
たしかに独特の世界観を持っているとは感じていたし、ただの軽薄なヤツではないことはわかっていたが。
ただもうこれで、ルカを止めることはできなくなった。
これはルカからの、ハッキリとした決別の宣言だと捉えるべきかもしれない。
戦争が終わり、ルカがブレイバーを辞めるといったとき、もうハンスに口出しする権利はないのだ。そういう線引きを、今この瞬間にされたのかもしれない。
野暮というものだろう。ここまでの決意を固めている人間を相手にして、易々と否定的な言葉をかけられるわけがなかった。
そのときは心から祝福して、彼を送り出してやるべきなのだろう。
たとえルカがアルディストンを去ることになろうと、ここまでの共闘は称えるべきことだし、その後の健闘は祈るべきものだ。
「じゃあ、そのルカの夢のためにも、さっさとこの戦争を終わらせないとな」
みんなそれぞれに、この戦争の先には、別々の夢や未来を抱えている。その別々の未来を掴みとるため、やるべきことをやるだけだ。
「だな。相棒よ。こっからの厳しい戦いも、フォロー頼むぜ」
ルカの差し出した掌を、ハンスは無条件で握り返した。
ただ――。
少し腑に落ちないことがあった。
「――でも、なんでわざわざ、このタイミングで?」
ハンスの元を訪ねてまで、それを語ったのだろう?
もちろん、語るべき相手に選ばれたことは、とても光栄ではあるが。
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