序章

11/18
前へ
/310ページ
次へ
「驚きましたか?」  してやったり、という表情を、レジーナはする。 「私もようやく、アルディスのお役に立てるわけです。必ず、この国をいっしょに守りましょうね。絶対にできますから。『ノアの意志』は私にそう語りかけています……」 『ノアの意志』が――? 「は、はいっ」  不思議だった。不思議な感覚だった。  短い言葉でありながら、神徒レジーナという偉大な存在が紡ぎ出すそのひと言ひと言は、神聖なる重みを持っていた。  そして最後の言葉で、いっそうその凄みを増した。 『ノアの意志』。 『ノアの意志』が語りかける――。  それは何かの比喩なのだろうか。  それとも、本当に――?  実際のところはわからない。けれど彼女は、女神アイリスという、ノアの生んだ神に魂を分け与えられた人間なのだ。その存在そのものが、もはや人間の常識では語ることができない。  彼女にはノアの言葉が聞こえているのだろうか。  彼女には、この戦争の結末が見通せているのだろうか。  もしそうなら、これほど心強いことはないのだ――。 「ユキさんは、『ラグナロク』という魔法を知っていますか?」  またもや突然に、レジーナは告げた。 「――もちろん、知っています。魔研が今も開発を進めている、いわゆる『究極魔法』ですよね? この戦争を終わらせるための、最終兵器とすらいわれています」 「その通りよ。『ラグナロク』の開発には、実は私も少し関わっています」  それについては、ユキも聞いたことがある。  というよりも、そもそも化神という存在は、代々アルディスの魔法技術の発展に注力してきた歴史があるのだ。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加