三章 『AL作戦』

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 ともかくそんなメンバーで、ゼノビア軍を攻め落とすべく、アルデウトシティの街を目指して進行している。もう数十分もすれば、危険地帯に侵入することになるだろう。  ゼノビア兵の姿が現れないのは、籠城戦のように、アルデウトシティでアルディス軍を迎え撃とうとしているからだと目されている。  こちらとしても、それは上等だった。『首都防衛AL作戦』は、アルデウトシティという街一つを滅ぼす覚悟で決行された作戦なのだ。元より覚悟の上だった。 「この戦い、アルディス軍の勝利だな」  前進の途中、不意にそんなことを、隣にいたルカが呟いた。  今回は珍しくルカと同じ隊になっている。その代わりに、もはや腐れ縁ともいえるミーアとは、別の隊となったわけだが。 「いきなりなんだよ?」  今は私語でさえも慎むべき場面だ。だからこそ、ルカはハンスだけに聞こえる声で話していた。 「それもなんだ、何かの確信があるってのことなのか」  昨日、ルカと交わした会話が否応なしに思い出される。 『ノアの意志』と『人間の意志』。  ルカはこの世の中で唯一、『ノアの意志』にコントロールされないものとして、それは人間が持つ意志なのだと説いた。  人間は自分の頭で考えて行動する。それが他の生物ともっとも異なる要素であり、人間を人間足らしめる事由でもある。  つまり人間は、自らの意志を持って行動しているのだ。『ノアの意志』ではなく、人間は自らの意志を持って、行動している、と。  簡単にいうなら、ルカはそういう話をしたのだった。  だから、彼が発した今のひと言も、それに関係する何かがあるのかと思ったのだ。 「確信はないよ。でもこの戦には、神徒レジーナ様が介入する。となれば、確率的に、順当にいけばアルディス軍の勝利さ。彼らも化神を送り出すなら話は別だけど、公式発表はなかったしな。――たぶん、ゼノビア側もそれはある程度想定できているんじゃないかな?」  想定できていながら、みすみす受け入れるというのだろうか。
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