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「そういうもんか? じゃあなんで、ヤツらも同じように、化神を使ってこないんだろう」
「それは作戦――だろうな。おそらく今後の戦いを踏まえての。あと、化神どうしの戦いは、凄まじいエネルギーの応酬になるからな。被害の規模がどうしても未知数だ。だから首都アルディストンに近いこの場所での、化神どうしの接触を避けたのかもしれない」
なるほど。最新兵器クラス――いや、もしかしたらそれ以上の二つの力がまともにぶつかり合えば、最悪は首都アルディストンにまで被害が及んでしまうかもしれない。
「アルディストンの首都機能は、ゼノビアにとっても残しておきたいもの、っていうことか」
「そういうこと。――これはオレの勝手な予想だけど、とりわけ魔研がその筆頭だろうな」
そのワードを聞くと、条件反射的にシャーロットの姿が浮かんだ。彼女は今日も、研究に忙殺されているのだろうか。
完成間近らしい、究極魔法の――。
「魔研? あいつら、魔研を欲しがってるんだ?」
するとルカには、呆れたような顔をされてしまった。そんなことも知らないのか、という言葉が聞こえそうだった。
「おいおいハンス、魔法の技術を欲しがらない国家なんて、今どきないぜ。イーヴァインもゼノビアも、あわよくばその力を手に入れようと欲しているのさ。だからアルディスは、より厳重に情報漏洩に考慮してるんだけどな」
そういう情勢があったとは知らなかった。魔法がアルディス独自の技術であり、誇りであることは理解していたが。
「魔法って貴重なんだな」
アルディストンに移住するまでは、ハンスにとって魔法という存在は、いわば空想のようなものだったのだ。実感がないのはそのためだろう。
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