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「オレの見解としては、仮に完成していても、ここは温存だったと思うがな」
ルカはそう考察する。
「――被害が広がるから、か?」
アルデウトシティは、首都近郊ではかなりの大都市だ。やすやすと破壊すれば、復興にそれだけ時間がかかることになる。
「半分は正解かな? それもあるけど、一番の理由はそれとは違うね」
ルカは確信に満ちたようすで首を振った。
「ヤツらの元帥をまだ引きずり出せてないからさ」
「元帥――ってえっと、たしか……」
「ヴェイン・デル・レーギオ。ゼノビア軍のトップの座にいる男で、実質的に国のトップでもある豪腕」
そうだったな。ヴェイン、か。
「今回、ヤツらの化神――つまりヴェインが参戦しないのは、それも理由の一つだと思うぜ? 向こうも究極魔法は恐れているんだ。下手にヴェイン元帥を参戦させて、究極魔法を使われて、それで命を落とすようなことがあれば、ゼノビアは終わる」
「終わる……?」
「そうさ。知らないか? ゼノビア軍の全権を担ってるのがヴェインだって。ゼノビア軍てのは、大袈裟にいうなら、ヴェインの私物みたいなモンなんだよ」
私物――はさすがにいいすぎにしても、そういう話は聞いたことがあった。
独裁的に国を支配していると。軍人でありながら、実質的に国の政治のトップに立っているのだと。
「だから、アルディスが勝利を納めるためには、ヴェインの首を取るしかないんだ。それで強制的に終わらせる。――向こうは自主的な降伏なんて、命に代えてもしないだろうからな。ゼノビアはそういう国だ」
最後のひと言がすべてを物語っている気がした。
それにしても、首を取る、か。ずいぶんと生臭い話になってくる。
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