三章 『AL作戦』

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「そのためにはまず、嫌な話だが、ゼノビア領土を荒らす必要がある。今のアルディスがヤツらにされているようにな」 「こっちも侵攻作戦が必要になるわけか……」  となると必然的に一般人を巻き込むことになる。いくらゼノビアが敵とはいえ、武装しない人間が命の危機に晒されるのは解せないことだ。 「綺麗事は通用しないぜ、戦争は。こっちだってゼノビア人から見りゃ悪人さ。そうなる覚悟がいる」  ルカはすでに割り切っている。冷静な口調と表情が、それを示している  「流れはこうさ。敵地を占領して、まず拠点を作って、物資の供給ラインを確保する。その拠点から次の街を攻めて、また新たな拠点にする。そうやって、ヤツらの首都までたどり着く。――ただまあ、『グランヴェル』は遥か北の先のほうだけどな」  ゼノビアの首都の名は、『グランヴェル』だ。ハンスには、名前を聞いたことがあるくらいしか知識がない。世界地図でいうなら、ルカのいうように、広大なゼノビアの国土の中でも北のほうに位置している。  そう考えると、途方もない。まだまだ戦争は長く続くのかもしれない。 「といってる間に、見えてきた――」  ルカが前方遠くへ視線を飛ばした。アルデウトシティだ。  そこは現在地よりも少々小高い、しかし平坦な丘となっていて、そこへ都市が広がっているという構図だった。  街全体を覆うような外壁が作られているのは、他の街の構造と同じで、アルディスでは一般的な姿である。  ただ、街が拡大するたびに増築を繰り返してきたのだろう、外壁の形状に統一感は薄く、逆にそれが特徴的なデザインとなっていた。  街を囲う塀の外に人の姿はなさそうだった。アルディス軍が予測した通りに、籠城戦を決め込もうということだろうか。  彼らとしてはけっして身動きが取れないわけではない。場合によっては自走兵器を使っての強行突破が可能だと腹をくくっているのかもしれない。
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