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部隊をいくつかに分断して、それぞれが一定の間隔を空けて、街を囲うようにして接近する。
街の入り口は数ヶ所しかないわけだが、律儀にそこを通って入ることはもちろんしない。
ここは元はアルディス管理下の街だ。いかにも堅牢そうに見えていても、手薄な箇所がどのあたりなのかの見当はついている。
その外壁に接近したところで、不意に肩を叩かれた。
こんなときに、またルカが何か話し出すのかと思ったが、振り返ってハンスは驚いた。
「久しぶりね、ハンスくん」
「あ……ああ……シェイラさん……」
思わずどきりとしたほどだ。彼女の象徴でもある眼鏡の、その奥の瞳が恐ろしく映った。
というのも――シェイラとは、あのデオグラストの任務地で別々になってしまって以来、顔を合わせることも声をかけることもなかったからだ。
あのとき、シェイラの指示を無視して、そのまま今という瞬間を迎えているのだ。
「お久しぶりです……」
挨拶もぎこちなくなる。
本来なら、あの任務の件を謝罪しておくべきだったのかもしれないが、やはり後ろめたさがあったために、ここまでそれもできずにいた。
もっとも、彼女は戦地を駆け回っていたはずなので、積極的に働きかけたとしても、叶わなかったのかもしれない。
いや、それは言い訳だ――。
どのみち、そのことを悔やむにはもう遅すぎるだろう。良くも悪くも過去はリセットして、ここから新しい関係性を築こうと決めた。
「今回はよろしくお願いします」
「あらあら、そんなに改まらなくてもいいわよ? これは任務なんだから。戦場に立てば、遠慮も礼儀も不要。あたしの部下はね、ただ結果だけ出してくれればいいのよね」
優しい言葉をかけられているようで、実はもっとも厳しいことをいわれているような気がした。
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