序章

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 それだけではなく、たとえば魔力を供給するシステムであるシェイドやフィラクテリといった魔装具も、元はというと化神の持つ能力を研究して作られた技術であるといわれている。  つまり、彼らは魔力の始祖なのだ。よってアルディスの化神は、魔力を自ら生み出すことができる――らしい。  要するに、シェイドやフィラクテリを必要としない。  それらがなくとも、魔法を放つことができる。アルディス国外でも無限の魔力を消費することができる。大量の魔力を扱うことができる。  それによってどのような優位性を生み出すかといえば、魔法を際限なく使用することができるわけだ。  さらには、通常の人間では不可能である、大量の魔力を必要とし、また大量のマナを消費する超弩級の巨大な魔法を発動することができる――。  超弩級の巨大な魔法――つまり、究極魔法。 『レベル5』に分類される最強の魔法。  そう、究極魔法『ラグナロク』とは、戦争終結のために開発されている、化神のための魔法なのだ――。 「でも、『ラグナロク』はまだ、完成していないという話ですが……」 「ええ、まだ『ラグナロク』は、完成はしていません」  妙に含みを持たせる言い方を、レジーナはした。 「でも、試作型はすでに完成しています。威力と効果範囲を抑えた『試作型ラグナロク』はすでに運用の段階に移行しているのですよ」 「試作型……ですか」  そういう発想はなかった。  というのも、『ラグナロク』はその威力、効果範囲ともに絶大であるため、発動実験というものができないと聞いていたからだ。  実験ができないということは、実際のデータを取ることができず、効果のすべては計算とシミュレーションに頼りきることになる。  だから、『試作型ラグナロク』が完成した、といっても、それはあくまでも理論上の計算によって導き出された試作魔法に他ならないのだ。
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