三章 『AL作戦』

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 ほどなくして、地面が小刻みに振動を始めた。  これは、地鳴りか――?  何かの破裂音のようなものが、いまだわずかに続いている。  ただごとではない事態が起こっているとだけは理解できた。おそらく、何かしらの兵器を使用したのだろう。  あの自走兵器だろうか?  確定はできない。ただ、自走兵器と一戦交えたあのときは、主砲の攻撃によって今のような地鳴りが起きていた。  可能性は高いかもしれない――。  自走兵器がどこに待機しているか、その情報はない。中心部とは別の場所に待機していたのだろうか。  と、そうしている間にも、こっちはこっちでゼノビア歩兵部隊の銃弾が激しくなってきた。こうなると、応戦するのは遠距離タイプでないと厳しい。  この場で自分にできることといえば――フットワークとこの複雑に入り組んだ路地を生かして、奇襲をかけることくらいだ。  一度その場を離れるようにして、ハンスは別の細い路地を進んだ。敵が射撃を仕掛けているのは、おそらくいくつかの区画を越えた先の、少し拓けた場所のはずだった。  慎重に、敵の待ち伏せを警戒しながら、さらに細い路地に入っていく。煉瓦質の建物の壁を這うようにして進んだ。  さすがにあまりにも狭い路地は、彼らの移動には使用されないだろう。だから逆に安全に移動できるはずだ。  路地を抜ける頃には、銃声が大きくなっていた。敵の部隊は近そうだ。  すぐそばの比較的背の低い家屋の、横に突き出した屋根が目に入った。手をかけて登っていく。屋根の上で身体を低くして、建物の端のまで進んだ。  そこから下を覗いてみる。  かろうじて、そのようすが窺えた。  銃をかまえた白の軍服のゼノビア兵が、横一列に近い形で隊列を成し、障害物の陰から代わる代わる引き金を引いているのだ。
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