三章 『AL作戦』

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 一列が撃ち終えると、次は後ろの一列が前に出る。その間に、下がった一列は縦断を装填する。その繰り返しだ。  なるほどこれならば、無駄な間を空けることなく連続して射撃ができるということか――。  これでは正面突破は難しいだろう。かといって、この場からできることといえば――。  ハンスはふと、自分の足場を見た。そこは建物の屋根なわけだが、その素材は煉瓦のような鉱物でできていた。  これを降らせれば奇襲になりそうだ。ただし、効果は一回きりだろう。さすがに屋根の素材が降ってくれば、敵襲を疑うはずだ。  狙うとするならば――たとえば、アルディス側の攻撃がゼノビア兵にヒットした直後がいい。そのタイミングがもっとも、彼らにとってリズムを乱す瞬間に違いない。  シェイラを含めて、部隊に遠距離タイプは複数人配備されている。誰かの攻撃が敵を捉える瞬間は必ずある。そのときをじっくりと待つだけだ。  ふと、そのとき遠方に視線がいった。黒煙が立ち上っているのはわかっていたが、その向こうで、何かが巨大なモノが動いているように見えたのだ。  あれはまさか――。  立ち並ぶ住宅を差し置いて、その動きが拝めるということは、少なくとも建物よりも巨大な何かがそこにいる証拠だった。  おそらく、間違いないだろう。あれは兵器だ。しかも、あの大きさは、ハンスたちが以前対峙したそれと同等の自走兵器だ。  現状のゼノビア軍の主戦力であり、あれを破壊しないかぎりは、アルディスに勝利はない――。  不意に頭によぎったことがあった。  ユキはどこにいるのだろう。もしかすると、あの兵器のいるエリアが、ユキの持ち場なのかもしれない。だとしたら、今この瞬間にも、その場に駆けつけたいほどだった。  自走兵器は、あのゼーファスの命さえも奪った。ユキは彼以上の実力者かもしれないが、それでも命の保証はない。  ユキの無事な姿をこの目で見なければ、何一つ安心することはできない。
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