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やがてシェイラたちの援護によって、交戦が激化した。互いに人員を削り合う消耗戦だ。
こうなるともう、生死には多少の運も関わってくる。
不運にも標的にされてしまう者、被弾してしまう者――その運命を、自らの意思で選び取ることはできない。
それは『ノアの意志』によって、決定づけられている事項だからだ。
それはたとえ、ルカのいう『人間の意志』があったにしても、抗うことのできないものだ。
そうならないことを祈りながら――ハンスはレヴォルツをかまえて突進する。白兵戦の中心で、できる限りの敵を斬り倒す。
もうどれほどの人間を傷つけて、また命を奪ったのかもわからない――。
無我夢中で戦ううち、敵の圧力が小さくなった。いや、すべて消え去ってしまった。
大地にひれ伏すたくさんの人間がいる。白い軍服と、灰色の軍服と、それから黒色の軍服だ。その三つが入り乱れた凄惨な映像が目の前に広がっている。
「アルディス軍の全員は、このまま進軍するわよ!」
シェイラの声がした。
「しゃあぁあっ!」
「おおおぉぉっ!」
それに続くように、威勢のよい声がどこかで轟く。
アルディスの軍服たちが――数は少し減ってしまったが、それでも勢いよく街中を駆けて行く。
その姿を、ハンスは意図せずぼんやりと眺めていた。そこに勇んで続くべきなのだが、乗り遅れてしまっていた。
というのも、身体のダメージはやはりある。いくら質の良い防御魔法に守られているとはいえ、まったくの無傷ではいられない。
外傷はなくとも体内にダメージは蓄積しているのだ。
ふと――すぐ傍で、蠢く何かをハンスは見つけた。
まるで魔物か害虫かのように、地面を蠢く何か――。
いや、違う――。
それは人間だった。灰色の軍服を――ハンスと同じ灰色の軍服を着た、ブレイバーナイトだったのだ。
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