三章 『AL作戦』

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 しかし見覚えはない。面識はないし、顔も知らなかった。おそらくはコガネクラスに所属しているのだろう。  ハンスは駆け寄った。そして彼を抱き起こそうとして、思わず躊躇した。 「大丈夫……か……」  いや、大丈夫ではないと、ハンスは自分自身の言葉を心中で制していた。 「……っ……」  声にならない吐息が口から漏れた。  ひどい状態だった。それ以外の言葉が見つからない。  おそらく、防御魔法が剥がされた状態で、大量の弾丸を浴びてしまったのだろう。身体のあちこちから、大量の血液が流れ出している。 「っ…………う……っ……」  必死に声を出そうとしているが、ままならない。それもそのはずだ。  何せ彼は――顔面にまでも弾丸を浴びていたのだ。  顔の半分が、原型を失うほどのダメージを受けている。それでも運が良かったのか、即死を避けることができたようだ。  いや、運悪く、即死を避けてしまった、というべきなのか――。  運悪く、即死できなかった。だからこうして、死が確定していながらも、最後のもがきを続けなければならない。  そう、間違いなく、彼はもう長くはない。助からない。  それだけでなく、腕の肉も骨も、分断されそうなまでに損傷している。  ハンスがさっき、助けようとして彼に触れることをやめた理由がそれだった。  おそらく触れてしまっただけで、彼は激痛に襲われてしまうに違いなかった。  だから、できなかった――。 「……お……ぅ……っ……あぁ……う……」  まるでゾンビのようなうめき声をこぼす。  もはや彼は、いつやってくるかわからない、命の事切れるその瞬間を待ちながら、苦しみ続けなければならないのだ。  やるせない気持ちに襲われた。  彼は、名前も生き様も知らない、赤の他人だ。だが同じブレイバーとして、アルディスのために尽力した一人であることは疑いようもない。
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