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できることであれば、助けてやりたい――。
助けたいのに――。
そう思うのが当然だった。仮に五体のいずれかを失うことになったとしても、命くらいなら何とか――ほんの一パーセントの確率でも、助かる可能性はあるのかもしれない――。
何か、何か――。
ハンスは顔をあげて、助けを呼ぼうとした。
そのハンスを見下ろすかのようにして、黒い影が落ちてきた。何かが太陽の光を遮ったのだ。
「シェイラさん……!」
ハンスの隣に立ったのはシェイラだった。
これ以上ないタイミングだった。実力者である彼女なら、高等な治療魔法を使えるかもしれない。
「お願いします。手当て――」
まるでハンスの言葉を遮るようにして、シェイラはおもむろに、魔構機銃を取り出した。
嫌な予感というのは、こういうことを指すのだろうか――。
少し先の未来が想像できる、この嫌な感覚はなんなのだろう。
この状況で、魔構機銃を抜くという行動に続く、想像できる次のアクションは、それほど多くはなかった。
いや、たった一つだったといってもいい。そして予想は現実のものとなる――。
シェイラは魔構機銃の銃口を、横たわるブレイバーナイトの彼へと向けた。
予想通りだという感情と、しかしまだ信じられないという感情が、入り乱れてハンスは動けなくなった。
本能で動けば、間に合ったかもしれなかった。
しかし、何かをいう暇も行動する時間も、ましてや思考を巡らせる瞬間すら与えられなかった。
瞬時に、それは緑の光を放出した。
独特の高音が響き渡ると同時に、ブレイバーナイトの彼は、ぱったりと地面にひれ伏し、もうそれからは、ぴくりと動くことすらもなかった。
「――っ……」
息を呑むというのはこういうことなのだろうか――。
それとも心臓が縮み上がったのか、とにかく目の前で起きたことへの整理がまだつかない。
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