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「うわぁ……シェイラさん……。容赦ないっすね……」
嫌なものを見せられたような、苦々しい声が聞こえてきた。
それが――あのルカの声だとわかるのにさえ、しばしの時間を要した。何度も聞いたはずの声なのに。
ルカはルカで、やけに冷静な声音だった。
まるでこんなこと――シェイラの行動など、慣れているかのように。日常茶飯事な出来事を受け入れるかのように。当然のことのように――。
「まあでも、得策ですよね。あのまま生きていたら、苦しいだけだ」
ルカは淡々と意見を述べた。
それを聞いたことで、ふっと、ハンスの心に冷めた感情が流れ込んだ。
結局のところ、ルカも、同僚の死に何の感情も抱いていない――。
咄嗟にハンスはそう思った、ルカに対して持った感想がそれだった。
少なくとも、ルカが自分よりも戦場に慣れているというのは知っていた。
逆にこのことで冷静さを失いそうになっている自分のほうが、ブレイバーとしては未熟なのだろう。恥ずかしいくらいだ。
「仕方のないことですね……」
嫌にあっさりと、ルカは呟き、頷いた。やはり、心を痛めてなどいない。
つまりはルカも、シェイラと同じような思想を持ち合わせているということだろう。合理的かつ冷徹に、効果的な判断のみを心がけている。感情に惑わされることなく。
間違っているのは、俺なのかもしれない――。
疑う気持ちが生まれてくる。これまで自分が信じてきたことを。
仲間であれば無条件で助ける――助けたくなるという、これまで信じてきた道が、音を立てて崩れ落ちようとしている。
もしかすると、ブレイバーは皆そうなのだろうか――。
たとえば、ドゥドゥやフォルクも、ミーアも、そして――ユキも。
「ハンスくんは、納得のいかないって顔ね」
「――えっ?」
名指しされることを想定していなかったので、変な声が出た。
「隠しきれてないわよ」
シェイラの言葉が降ってくる。彼女のことを、いまだ直視することができない。
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