序章

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 魔研の研究者は優秀であり、その頭脳はユキの想像の領域をはるかに超える、天才ばかりの集団だ。  それはわかった上で、しかし試作型というのは、どう転ぶかわからないような、危険が伴う可能性を残していると思われる。  そしておそらく――というよりも確実に、その『試作型ラグナロク』を発動するのは――目の前の神徒レジーナか、もしくはもう一人の化神、魔卿ジェルドということになる。  「その試作型を、レジーナ様が使われるのですか? ――アルデウトシティの決戦で」 「あら、あなたはなかなか、察しがいいのね」  よくできました、とでもいいたげな、挑戦的な笑みを浮かべる。 「――まあ、化神が参戦するとなると、その予想は簡単にできるかな? 『試作型ラグナロク』を使用して、ゼノビア軍の自走兵器『インフレキシブル』、『ザイドリッツ』、『デアフリンガー』の三機を破壊する。それが、私に与えられた任務です」  なるほど。やはりアルディス軍は、あの自走兵器の排除こそが、勝利への最短ルートだと捉えているらしい。  それはユキも同じだ。彼らの長所を消すには、やはり機械兵器を奪っていく他ない。 「『AL作戦』にはもちろん、ユキさんも参加するのよね」  「はい。アルデウトシティで敵を迎え撃ちます」  無言のままで、彼女は一度、大きく頷いた。 「ラグナロクが発動するときは、私から離れていてね。被害がいったいどれくらいの規模になるか、使ってみるまでわからないから」  神妙な面持ちだった。  彼女に課せられた、役割の重さが伝わってきた。これは化神である彼女にしか処理できない任務なのだ。  この『試作型ラグナロク』の発動は、アルディスにとって、ぶっつけ本番でありつつも、実験の意味も含まれているのだろう。  魔研が試算した通りの破壊力が得られるか、またその効果範囲に収まるか――。  今後、正規の究極魔法として完成するための足がかりとする意味を持たされている。
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