三章 『AL作戦』

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※※※  とにかく自走兵器を破壊しなければ、この街を解放することばできない。  ゼノビア軍の主戦力であり切り札でもある自走兵器を奪うことで、ようやくアルディス軍は対等なステージに立つことができるといえるだろう。  しかし、その切り札は一機ではないのだ。  それぞれ別々の街に、残りの二機も同時に配置されていて、ここアルデウトシティと同じく破壊工作が続けられているはずだった。  つまり、アルディストンを目指してくる自走兵器は、合計で三機。そのすべてを破壊し、行動不能にすることが、この『首都防衛AL作戦』の最低限の勝利条件といえるだろう。  そう考えると、かなり難易度の高いミッションだということがわかる。戦場ではそう何度も幸運は訪れない。戦力的に上回っているゼノビアの三機の兵器が、すべて稼働不能なまでに破壊されるという状況は、確率的に考えてもほぼ起こり得ないといってもいいだろう。  たとえブレイバーを総動員しようとも。  普通に戦えば、そうなる。  だからこそ、アルディスも切り札を場に繰り出したのだ。最大の二つの力のうちの一つ、神徒レジーナを参戦させる決断をしたのだ。  そのレジーナは、もうどこかの街で、戦闘を開始しているのだろうか?  少なくとも、雰囲気から察する限りは、まだこの街で戦っているわけではなさそうだが――。  彼女と初めて対面したときのことが、ハンスの脳裏に思い出された。  神徒であると教えられなければ、まるでそうとは気づかないほどの、まるで貴族のような優雅さを彼女は持っていた。  それでいて、さらに、どこか神秘的な雰囲気までもをまとっていた。何者をも寄せつけないような、けっしてどんな佳境にも動じないような、そんな強者の空気感でもあった。
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