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その力がどれほどのものなのか、ハンスは知らない。
もしもあの自走兵器でさえも寄せつけないような実力を秘めているというのなら、すぐにでも参戦してもらいたいくらいだった。
そのほうが――圧倒的に犠牲者は少なくて済む――。
そんなことを考えてしまうこと自体、自分の心の中には、プロの兵士としての綻びがあるのだろうか。
だからといって、先ほどシェイラが躊躇もなく行った――あんな行動を取れるようになりたいとは、ハンスは思わない。たとえそれが、ブレイバーとしての甘さにつながるのだとしても。
あれが正しい行為だとは、やはり思いたくないのだ――。
街は不思議なほどの閑散さを取り戻していた。
といっても、静かなわけではない。銃声や爆発音はあちらこちらから聞こえている。
ただ、襲いかかってくるゼノビア兵の数は減っていた。
彼らは彼らで、戦力を消耗しているということだろう。それはアルディス軍も同じなわけだが。
敵を殲滅するのか、それとも自分たちがそうされるのか、戦いの様相は非常にシンプルなものだ。とにかく一人でも多くのゼノビア兵を戦闘不能にすることがハンスの任務である。数を考えていてはキリがない。
個人個人がそうやって、より良い成果をあげることで、ひいてはアルディス軍の勝利につながるのだ。
目の前を行くシェイラなどは、その思想を実践する最たる人物であるといえるだろう。
彼女は任務に忠実だ。恐ろしいほどに。こちらが身震いしてしまうほどに――。
それは先の一件だけではなく、デオグラストでの任務でも、ハンスはまざまざと見せつけられている。
彼女の思想のすべてを理解することはできずとも、別の思想を持つ道を進むにしろ、ブレイバーとして一流に近づくためには、きっとシェイラから学べることも多いはずだった。
とにかく今は、シェイラの戦いというのをこの目で見てみたい。
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