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「もっとも……どのみち兵器の総攻撃によって、この街は跡形もなく滅ぶだろうがなぁ。まあー、どうせ死ぬなら、早いも遅いも同じだろう」
エルヴェルはゆったりとした動作で、剣を抜いた。それで初めて気づいたのだが、腰に鞘を下げていたのだ。
銃器の使用が一般的なゼノビアの兵士で、剣使いというのは珍しい。そもそもそんな人間はいないとすら思っていた。変な話だが、親近感すら沸いてしまうくらいだ。
ゼノビアも十数年前までは、近距離武器の使い手も多かったと聞く。それが今や、銃中心の組織となってしまっている。
「しかし三対一とは少し部が悪いか……。が、そんなことは些末な問題だ。たとえここで俺が散り果てようとも、それならばお前たちが進めぬよう、両脚をもいでくれよう」
死をも超越した雰囲気が、彼にはあった。
その口が語るように、仮に刺し違えることになったとしても、ハンスたちの行く手を阻むつもりなのだろう。それが母国の利益になると、そう確信している。
こちらも本気でかからなければ、最悪の事態を招く。本気で、命を絶つつもりでいかなければ――。
ハンスはレヴォルツを抜いた。
同じくルカは魔槍を、シェイラは魔構機銃を。
たしかに、実力者かつ遠距離型のシェイラがいるうえに三人というのは、かなりのアドバンテージになりそうだ。
ただ、エルヴェルの放つ雰囲気には、その差を感じさせるほどの隙がないのだ。かかってこいといわんばかりに、どっしりと構えている。
シェイラの魔構機銃が緑に輝く――その直後に、魔弾がエルヴェルに向けて放たれた。
すぐには、ヤツは動かなかった。被弾の直前になって――エルヴェルは剣を振り抜いた。目に見えないほどのスピードで。
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