三章 『AL作戦』

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 いとも簡単に、魔弾を弾き飛ばした。ゼノビアの銃弾に比べて速度に劣るとはいえ、魔弾を肉眼で捉えるのは一流の技だ。  やはり一筋縄ではいかない相手か――。  ハンスはルカに目配せした。ルカも同じ考えだったようで、視線があった瞬間に頷いた。  主力であるシェイラが遠距離攻撃をするこの場合は、ハンスらは足止めを行うのが有効的であり定石だ。  敵の動きを狭い範囲に留めることができれば、シェイラの腕ならば狙いを外す確率は限りなく低くなる。  ゼノビア兵には、アルディスのような防御魔法は存在しないため、軍服を貫ける攻撃が一撃でもヒットすれば、それだけで勝機はある。三対一はけっして公平ではないが、今はアルディス軍の勝利が最優先だ。  ハンスは右から、ルカは左から、エルヴェルに睨みを効かせる。ただ、エルヴェルもそれには気づいている。こちらの手の内は想定済みだろう。  さて、どう仕掛けてくるか。 「ふふん……」  エルヴェルは笑みを見せた。何がおかしい。余裕の表れなのか。 「そう簡単にはやらせないよ……。ゼノビア兵の誇りとしてね。そう簡単には死ねないのさ……」  エルヴェルは、握った剣の柄をなにやら操作した。そして、剣を横に振るう――。  次の瞬間に、切っ先がハンスを襲ってきた。慌ててレヴォルツをかまえる。間一髪のところで、それを防ぐことができた。  まさか剣を投擲するとは――と、そう思った。  けれど、違った。エルヴェルは柄から手を離してなどいなかった。離れたのは、刃物だけだ。  エルヴェルの持つ剣が、何等分にも分断され、まるで鞭のように自由自在に踊っていた。その分解された刃物部分は、金属のワイヤーのようなものでつながれているようだ。  これもまた、ゼノビアの兵器技術の一つなのだろうと思われる。アルディスでは見かけない種類の、奇抜で特殊な武器だった。
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