三章 『AL作戦』

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 しかし、そう簡単にはいかない。うねり分割する鞭状の剣の一部に、軽々と受け止められた。剣本体にダメージもない。  一度距離を取った。  なるほど、これが神器の力か、とハンスは悟った。  神鉱物オリハルコンは、一般的な鋼鉄を凌ぐ硬度を秘めているという話は聞いていた。マナを付加してなお、それを上回れないということだ。  神の力を宿した鉱物――やはり一筋縄ではいかないらしい。そんな常識外れの材料が、すべてではなくとも、要所の武器には使われているのだろう。  たとえばあの、自走兵器にも。ただでさえ、まともに太刀打ちできないうえ、物理的な強度までそうなのだ。  破れるのは、やはり化神だけなのかもしれない――。  そこで――シェイラの魔弾がエルヴェルにヒットした。小さな破裂が起こって、エルヴェルの身体が後方に飛んだ。  倒れる間際に、うねる剣を利用して体勢を立て直した。  ゆらりと立ち上がる。見たところ、外傷は見当たらない。ただ軍服は焼けて一部が消失していた。その下に、銀色に光るの鉄板のようなものが覗いているのが見えた。  なるほど、軍服の下にも防弾用の装備を着込んでいるらしい。それもオリハルコン製なのかもしれない。まともなダメージがないわけだ。  となると、勝利のためには生身の部分を狙うしかないわけだが――。 「残念だったなぁ……。この身体は貫けない。そう簡単には」  エルヴェルはやはり、気の抜けた声でいった。  黒い瞳は生気の薄い光を灯している。まるで死への恐怖心を超越したような、据わった目をしているようにすら見える。 「なら次は素直に顔面を狙わせてもらうわ」  と、シェイラは応酬した。
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