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やはりそうなるだろう。
確実に皮膚が露出しているのはそこだけなのだ。
その瞬間の映像を想像したくはないが、こうなればもう、勝敗は白か黒か――生か死かの二択になる。目は背けられない。
「まあ、そうだよなぁ。そのほうが分かりやすくていいか。どのみち俺の役目は足止めだ。キミたちに無理して勝つ必要もない……」
「へえ、なんだか諦めたような口ぶりだけど」
シェイラは意外そうにする。
「そう、気分はもとより諦めているよ。そのほうが気楽だ。三対一じゃどう考えても部が悪いしなぁ……。何より――ゼノビア軍の目的は、戦争の勝利。俺自身の勝利じゃない」
「つまり――軍の勝利のためなら命を落とすことは厭わない、と」
聞いたことはあった。
話の中だけでは、聞いたことはある。
ゼノビア軍の思想は、国の勝利を最優先すると。兵士はそのための駒であり、勝利のための戦死は名誉ですらあると。
そう教え込まれ、魂レベルまで刷り込まれているらしい――。
眼前の男は、それを体現しようとしている。
嫌な話だ。善悪は別にして。不快感はある。
けれど結局のところ、その意思というのは、軍人一人ひとりに宿るものだ。いくら軍が繰り返し指導したところで、完全に植えつけることはできない。
「その通りだよ、青年。軍の勝利が自分の勝利だ。そして命を落とすことは敗北ではないんだよ。ゼノビア軍が勝利すれば。逆にゼノビアが負けて、俺が生き残っても、それには何の意味もない。むしろ地獄のような結末さ。その後は敗北者としての悲惨な人生を歩むことになる――」
壊れている――ひと言で表すなら、そう思った。
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