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「でも、それだけの魔法なら……何か副作用のようなものはないのでしょうか?」
たとえば、そう、禁術に指定された魔術のような。
魔術というのは、何も殺傷能力の高さが理由だけで、その使用が禁じられたのではない。
正式には公表されなかったが、人体を蝕む副作用が確認されたのだ。
大いなる力を得るためには、人類はその犠牲を払わなければならない。それがこの世の摂理だ。『ノアの意志』がそうさせるのかもしれない。
究極魔法がそうでないという証明を、いったい誰がすることができるだろう。
しかし、レジーナは不安を一蹴するかのような、穏やかな微笑みを作った。
「心配しなくても、私は大丈夫よ。これでも神徒ですからね。――それよりも、あなたたちブレイバーのほうが不安です……。もしかしたら、ラグナロクに巻き込んでしまうかもしれないから」
レジーナは、深憂を含んだ声を漏らした。
母性すら感じさせた。遠い日に亡くしたはずの、母を思い出しそうになって、ユキはすぐに気持ちを引き締めた。
もちろん、それはあり得ることだ。犠牲者をゼロに抑えることは、実質的には不可能かもしれない。
けれど、その心配を彼女にさせてはならない。満を持して参戦する神徒レジーナの足を、端役の自分たちが引っ張ることは許されない。
「私たちのほうこそ、大丈夫です。実戦ではおそらく、アルディス軍から退避の指示が出ますから、それを正しく実行するだけです。レジーナ様の邪魔はしません」
嘘偽りのない本音だった。
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