三章 『AL作戦』

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「ハンス!」  ルカの声がしたのだけがわかった。が、すぐに、金属どうしがぶつかる音に変わる。エルヴェルは狙いをルカに変えたのだ。  さらに魔弾の高音が複数――。  そして金属の甲高い衝突音。  ハンスは身体を起こした。シェイラの魔弾がエルヴェルを襲っていた。  エルヴェルは回避する、打ち消す。  しかし、そんな展開にも、一瞬の隙が生まれた――。  本人のいうところの、壊れたエルヴェルは、僅かながらに防御面が疎かになっていたのだ。 「終わりよ」  シェイラの魔構機銃が、その銃口が確実にエルヴェルの顔面を捉えるときがやってきた。  その瞬間に、ハンスは理解した。  これを避けることはできない、と。  引き金が引かれた瞬間に、エルヴェルの命は終わるのだと。  目を背けたい気持ちがあった。魔弾が命中した瞬間に、この一帯は赤く染まる地獄えずとなることは容易に想像ができたからだ。  それだけで済めばいいが、そうなるに至らしめるエルヴェルの亡き姿を見ることも憚られた。  シェイラが引き金に力を込めるのが見えた。  その瞬間、不覚にもハンスは、エルヴェルの頭から目を逸らしていた。そのまま、一秒が経過する。 「――えっ?」  驚くようなシェイラの声がした。そして魔弾が炸裂した気配がない。  ハンスは顔を戻した。エルヴェルは生きていた。しかも、魔弾を受けた痕跡すらなかった。  おかしい。あの距離、あのタイミング、避けることは百パーセント不可能だったといっていい。  ならばなぜ、防げたのか?  答えは一つしかない。避けられなかったということは、受けた止めたもしくははじいたというしかない。  けれどその決定的瞬間を見ることはできなかった。
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