三章 『AL作戦』

36/82

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
 自分以外にも、あの能力を操れる人間がいた――。  それはまさに、拠点でレジーナに聞かされた話と一致していた。 『いずれは同じ力を持つ人間と、あなたが相対するときがくるかもしれません』  レジーナはそういった。  しかし、やはり目の前で目撃すると、必然的に興味を奪われてしまう。  なぜ、その能力を持っているのか。いったい、いつから使えたのか。  ただ状況的に、エルヴェルを問い詰めることはできない――。 「やっぱり見間違いじゃなく、魔弾を消滅させたのね」  連射を止めたシェイラが問う。エルヴェルは、軽く笑みをこぼしただけだ。  詳細を語るつもりはないらしい。そもそも、ハンスだからこそ、一発で能力の正体を見破っただけで、シェイラはそのことには気づいていない。  いや、気づいていないというか、原因が掴めていないのだろう。それがゼノビアの兵器による効果なのか、エルヴェル自身の能力なのか。  ルカはどうなのだろう?  直接話したことはなかったが、都合二回程、目撃する機会はあったはずだが。 「何か特殊な武具でも使ってるのか……?」  ルカはそう推察した。  ということは、ハンスの能力にも気づいていないようだ。それか、エルヴェルの力がハンスと同様のものだと考えていないのか。  どちらにしろ、ルカの推測は間違っている。が、そのことを伝えるのは憚られた。神徒レジーナからも告げられたのだ。この力は無闇に公表するものではないと。  積極的に公にするべきではない。  ただ、自分と同じ能力を持つ人間がこの世界には存在している――その事実だけは、疑う余地はなさそうだ。  自分だけが特別なのではなく、もしかすると、案外常識的な割合で、世界のあちこちに存在しているのかもしれない――。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加