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自分以外にも、あの能力を操れる人間がいた――。
それはまさに、拠点でレジーナに聞かされた話と一致していた。
『いずれは同じ力を持つ人間と、あなたが相対するときがくるかもしれません』
レジーナはそういった。
しかし、やはり目の前で目撃すると、必然的に興味を奪われてしまう。
なぜ、その能力を持っているのか。いったい、いつから使えたのか。
ただ状況的に、エルヴェルを問い詰めることはできない――。
「やっぱり見間違いじゃなく、魔弾を消滅させたのね」
連射を止めたシェイラが問う。エルヴェルは、軽く笑みをこぼしただけだ。
詳細を語るつもりはないらしい。そもそも、ハンスだからこそ、一発で能力の正体を見破っただけで、シェイラはそのことには気づいていない。
いや、気づいていないというか、原因が掴めていないのだろう。それがゼノビアの兵器による効果なのか、エルヴェル自身の能力なのか。
ルカはどうなのだろう?
直接話したことはなかったが、都合二回程、目撃する機会はあったはずだが。
「何か特殊な武具でも使ってるのか……?」
ルカはそう推察した。
ということは、ハンスの能力にも気づいていないようだ。それか、エルヴェルの力がハンスと同様のものだと考えていないのか。
どちらにしろ、ルカの推測は間違っている。が、そのことを伝えるのは憚られた。神徒レジーナからも告げられたのだ。この力は無闇に公表するものではないと。
積極的に公にするべきではない。
ただ、自分と同じ能力を持つ人間がこの世界には存在している――その事実だけは、疑う余地はなさそうだ。
自分だけが特別なのではなく、もしかすると、案外常識的な割合で、世界のあちこちに存在しているのかもしれない――。
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