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そのとき――ルカの驚きに満ちた顔と同時に、彼は持っていた獲物を落としてしまった。魔槍に宿っていたマナの光も消える。
ただ――ルカが怯むことはなかった。そのまま素早くエルヴェルの側面に移動し、蹴りを叩き込んだ。
この判断力は、さすがだ。
エルヴェルの身体は少しよろめいたが、やはりオリハルコン製の防具の上からではダメージはほぼないらしい。
よってすぐに反撃がくる。ルカはフットワークを生かして回避をした。被弾は避けられたが、取り落とした武器からは離れてしまった。
援護に行くしかない。ハンスは今一度、レヴォルツを握る掌に力を込めた。
足を動かす。スピードに乗る。幸運なことに、エルヴェルはこちらに背を向けている。
後頭部付近へ一撃を加えられれば、戦闘不能にできるかもしれない。
レヴォルツ振り上げる。体重を乗せるように、勢いのままに、レヴォルツを一閃する――。
が――。
甘くはなかった。エルヴェルは気づいていた。瞬間的に反転して、ハンスの剣を受け止めた。
「次はキミだ。悪いがその剣、もらう!」
もらう、の意味は咄嗟に理解できなかった。まさか剣を奪う気ではないだろう。
エルヴェルはうねる剣を再度振り抜いた。ハンスもレヴォルツでそれを受けにいった――。
金属どうしが触れる高音が響いて、二つの剣はぶつかり合った。それは先ほどからたびたび起こっていたことだ。
しかし今――何かが違っていた。
感触というのか、感覚というのか――いやそれだけでなく、金属どうしが衝突したときの、独特の高音でさえも――。
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