序章

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 ただ、出撃する予定の全軍が、同じ心意気であるかはわからない。  中には、意図せず逃げ遅れる者も出るだろうし、怪我人もいることだろう。だから、まったく痛みを伴わないなど、ありえない。  少なからず、味方の被害者も出る――だろう。  戦争というのは、勝者であっても敗者であっても、等しく大切な何を失ってしまう――。  そういうものだと思う。 「そういってもらえるなら、私も踏ん切りがつきますね。――すべてはアルディスのため……。私が神徒としてできることは、ただひたすらに、国の発展を願って力を使うこと、それくらいのものです。この力を賜ったその日から、私の肉体と精神はアルディスという国とともにあります」  肉体と精神が――。  アルディスとともにある――。  にわかには理解しがたい表現だった。  それではまるで、化神とはアルディスという国そのもの、とすら受け止められてしまう。  あえて説明する必要もないくらい当たり前のことだが、国家という概念は、物理的な形を持つものではない。  精神はともかく、肉体がアルディスとともにあるというのは、やはり理解しがたい思想だった。  それとも、化神ならわかる、何かがあるのだろうか?  化神――。  神の分身――。  人類でもっとも、『ノアの意志』に近い存在――。  ふと思う。彼女は一人の人間として、どんな人生を送っているのだろう、と。いや、単なる人間というのとは、すでに違っているのかもしれない。  人間から、神の分身へと昇格を果たした存在。人ならざるものに進化を遂げた存在――。
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